小脳・マシンインタフェースによる単一Purkinje細胞活動と運動学習の因果関係直接評価法

片桐 和真  田中 良幸  平田 豊  

誌名
電子情報通信学会論文誌 D   Vol.J95-D   No.5   pp.1304-1311
発行日: 2012/05/01
Online ISSN: 1881-0225
DOI: 
Print ISSN: 1880-4535
論文種別: 論文
専門分野: バイオサイバネティックス,ニューロコンピューティング
キーワード: 
運動学習,  前庭動眼反射,  金魚,  小脳,  ブレイン・マシンインタフェース,  

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あらまし: 
身体運動の制御と学習の中核は小脳が担っている.小脳皮質神経回路を構成する細胞タイプのうち,Purkinje細胞は唯一小脳外へ軸索を伸ばす出力細胞である.これまでの研究により,Purkinje細胞の発火頻度は,筋系を駆動するための運動指令をコードしているものと考えられている.したがって,運動の学習はPurkinje細胞発火頻度パターンが変化することにより実現されるものと考えられている.こうした知見は,主に動物を用いた行動実験とPurkinje細胞単一神経電位計測により得られたものである.しかし,このような実験では,神経細胞活動変化と行動変化の間の相関関係を評価できるのみであり,単一の神経細胞活動が運動制御や運動学習に果たす役割を直接評価することは困難である.本研究では,こうした従来のシステム神経生理学的手法の限界を超え,小脳神経活動と運動学習の間の直接的因果関係を評価するためのスキームを提案する.提案スキームは,前庭動眼反射(VOR)の運動学習を例に,金魚の眼球運動制御を担う前庭小脳Purkinje細胞の単一神経活動計測を行い,ブレイン・マシンインタフェース(BMI)を介して直流モータを制御するものである.この時,直流モータの制御誤差をVOR運動学習を駆動する網膜像のスリップ信号として金魚に与える.この系により,モータ制御の精度向上は,記録中のPurkinje細胞発火パターン変化に直接関連づけられる.この系を構築し,動物実験を実施した結果,VOR運動学習にかかわると仮定されてきた記録中の単一Purkinje細胞の発火パターンが徐々に変化し,直流モータの運動誤差が適応的に減少する事が示された.この結果は,単一の小脳Purkinje細胞発火パターンの変化と運動学習の間の直接的因果関係を初めて示したものである.