ソフトウェア開発の上流工程を支援するSpecRefiner

工藤 隆司  中須賀 真一  堀 浩一  

誌名
電子情報通信学会論文誌 D   Vol.J84-D1   No.6   pp.702-712
発行日: 2001/06/01
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Print ISSN: 0915-1915
論文種別: 特集論文 (システム開発論文特集)
専門分野: ソフトウェア工学
キーワード: 
人工知能,  事例ベース推論,  ソフトウェア開発環境,  構造化分析,  

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あらまし: 
ソフトウェア開発の上流工程において,分析モデルの詳細化過程を支援するシステムを開発した.支援なしの場合に比較して,人間が行うシステム分析時の見落しが減らせる.ソフトウェア開発の下流工程への支援ツールの適用研究や実現は盛んに行われてきたが,上流工程への支援ツールの適用に関しては,研究段階のものが多く,特に概念モデルを表現する構造化分析などにおいては,分析過程自体を支援するものはほとんど見受けられない.構造化分析における段階的な詳細化の過程を支援する手法と,そのシステムSpecRefinerを構築した.SpecRefinerでは,自然言語で記述された,システムが何を行うかを表現した「仕様」と,それに付随するDFD(Data Flow Diagram)を事例ベースに蓄積し,新たな要求分析タスクを実施する際に段階的詳細化の過程で,類似した仕様とDFDを検索し,要求分析プロセスを支援する.開発した手法では,ソフトウェア開発工程を,発見(finding)-修正(revising)-詳細化(refining)という3段階と考え,その各段階を支援する.過去に分析された事例を発見し,その事例を修正し,更に詳細化を継続する.また,設計理由の保持や設計履歴の参照機能で,非同期的な協調設計における支援を行う.Fischer,中小路らは,領域に依存した領域指向設計支援環境を構成することにより,専門家が専門家自身でそのツールを利用して,その領域のアプリケーションを構成させることが容易になるという立場を主張する.溝口らによるオントロジー研究では,領域に依存しないレベルでオントロジーを整理し,SEとエンドユーザの間でオントロジーを用いたインタビューを行うことで,オントロジーと対応したビルディングブロックを利用した設計を行うことを可能とする.瀬田らの研究では,エンドユーザ自身がタスク構造を記述する.提案する手法は,Fischerらの領域に依存する領域指向設計環境と,溝口らの領域に依存しないオントロジーの中間に位置づけられる.領域依存の知識と,領域に依存しないオントロジーや記号レベルの知識をシームレスにつなぐことにより,領域依存の世界と実装レベルの世界を翻訳するSEやエンドユーザの認知的な負荷を減らすことが可能となる.結果として,分析時の見落しを減らし,分析時間を有効に利用できる.