海馬を用いた記憶システムの神経回路網モデル

伊藤 真  黒岩 丈介  三宅 章吾  

誌名
電子情報通信学会論文誌 D   Vol.J82-D2   No.2   pp.276-286
発行日: 1999/02/25
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DOI: 
Print ISSN: 0915-1923
論文種別: 論文
専門分野: バイオサイバネティックス,ニューロコンピューティング
キーワード: 
中期記憶,  海馬,  時系列パターン,  入力履歴,  

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あらまし: 
エピソード記憶を短期記憶から長期記憶に固定する際, 短期記憶を一時的に中期記憶として保存するバッファのようなものが必要であり, 海馬がその機能を有すると考える. エピソード記憶を構築するためには, 時間的な要素を含まない異なる事象の連合(空間パターン)だけでなく, 時間的な要素を含んだ異なる事象の連合(時系列パターン)も必要であると考える. 本論文では解剖学生理学的知見に基づいた, 海馬神経回路網モデルを提案する. 本モデルの特徴は, (i)連想想起の働きを有すると考えられている海馬CA3に入力履歴を考慮した学習側を適用することにより, 時系列パターンの学習を可能とした点, (ii)歯状回に直交符号化, 更に海馬CA1に復号化の機能をもたせた点である. 直交符号化の機能により, 海馬での記憶容量の増加が期待される. モデルの数値シミュレーションにより, 中期記憶として空間パターン及び時系列パターンを学習し, それらの連想想起が可能であることを示した. この結果は, 本海馬モデルがエピソード記憶を中期記憶として保持することが可能であることを意味する. 得られた結果は, 生理データと一致しており, 本モデルの有効性が示された.