ラグビー高校日本代表選手の疾走に関する認知過程の情報学的研究

山田 雅敏  里 大輔  遠山 紗矢香  竹内 勇剛  

誌名
電子情報通信学会論文誌 D   Vol.J103-D   No.3   pp.72-81
発行日: 2020/03/01
Online ISSN: 1881-0225
DOI: 10.14923/transinfj.2019HAP0002
論文種別: 特集論文 (ヒューマンコミュニケーション論文特集)
専門分野: ヒューマンコミュニケーション基礎
キーワード: 
コーチング,  疾走,  認知過程,  ラグビー,  

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あらまし: 
近年,認知科学や人工知能学の視座から,暗黙知的性質をもつ身体スキルを解明しようという機運が高まっている.とりわけ,身体スキルと認知との関係性に注目した知見が多く散見される.そこで本研究では,ラグビーにおける疾走に焦点を当て,その身体スキルの熟達における認知過程を解明することを目的とする.疾走の熟達における認知過程には,共通した認知や特徴的な傾向が導かれる,というのが主張である.疾走に対する認知とは,身体の個人固有性や状況依存性の高いものである.しかし,既に自動化されていた疾走を,再度,認知学習レベルに戻す場合,コーチの理想とする疾走フォームと選手の身体動作のズレを指摘し,修正することによって,コーチの伝えたい疾走の身体感覚を,選手が体感することが要請される.したがって,個々人の解釈のゆらぎを伴いながらも,疾走に対する共通した認知過程が明らかにされることが期待される.以上のような背景のもと,ラグビー高校日本代表選手19名(フォワード10名,バックス9名)の疾走に関する認知過程について明らかにすることを試みた.方法として,選手が記述した言語報告をSCAT(Steps for Coding and Theorization)により要素化し,プロットグラフを作成した.また,疾走に関する定量的な自己評価を収集した.考察の結果,(1)疾走動作に伴うスピードや加速の体感,(2)ラグビーの実践への応用,が選手間で共通した認知として示された.また,ポジション別によって認知過程に違いが確認され,(3)フォワード選手は腕振りの動作を意識,(4)バックス選手は下肢の動作を意識,(5)プロップやフッカーは下肢の動作への意識が低い,ことが特徴ある傾向として示唆された.更に,疾走の経時的な認知変化として,(6)スピードや加速感といった体感は頻繁に認知され,(7)段階的にラグビーの実践へ応用される可能性が示唆された.