確率共鳴現象の情報通信への応用を目指して

田所 幸浩  山里 敬也  田中 宏哉  荒井 伸太郎  中島 康雄  平岡 真太郎  

誌名
電子情報通信学会論文誌 B   Vol.J102-B   No.6   pp.445-458
発行日: 2019/06/01
Online ISSN: 1881-0209
DOI: 10.14923/transcomj.2018JBR0001
論文種別: サーベイ論文
専門分野: 基礎理論
キーワード: 
確率共鳴現象,  雑音支援,  微弱信号検出/受信,  非線形素子,  1bit A/D変換器,  仮説検定,  

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あらまし: 
確率共鳴(Stochastic resonance: SR)とは,系の雑音強度の増大に対して系の応答が向上する非線形現象のことである.従来,雑音は工学的には邪魔なものとしてフィルタ処理等を駆使して積極的に取り除かれてきた.しかし,確率共鳴では異なるアプローチをとる.すなわち,雑音を積極的に利用することで,系の応答を改善する.例えば,生態系は雑音を巧く信号処理に活かすことで,雑音に埋もれた微弱な信号であっても感知できるしくみを有している.このしくみを情報通信に応用することができれば,従来の系では感知できないような微弱な信号を用いた情報通信システムの構築が期待される.そこで本サーベイ論文では,まず確率共鳴現象についての初期の検討から現在に至る研究動向を俯瞰し,確率共鳴現象を支える基礎理論についての概説を試みる.次に,確率共鳴現象の情報通信への応用を促すため,1bit A/D変換器による多レベル信号の復調,仮説検定においても一定の条件下で信号検出確率を改善できるなど,具体的な応用例について概説し,読者の現象応用の手助けとしたい.