機械翻訳を用いた3言語間コミュニケーションの相互理解の分析

稲葉 利江子  山下 直美  石田 亨  葛岡 英明  

誌名
電子情報通信学会論文誌 D   Vol.J92-D   No.6   pp.747-757
発行日: 2009/06/01
Online ISSN: 1881-0225
Print ISSN: 1880-4535
論文種別: 特集論文 (異文化コラボレーション論文特集 )
専門分野: 
キーワード: 
機械翻訳,  相互理解,  多言語間コミュニケーション,  

本文: PDF(547.3KB)
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あらまし: 
異言語間のコミュニケーションに,機械翻訳を用いることが試みられている.しかし,機械翻訳を用いた多言語コミュニケーションで共通基盤が問題なく形成されるか否かの評価・検証は行われていない.そこで,本論文では,日本語,韓国語,中国語を第一言語(first language)とする話者を対象に,チャットシステムを介した遠隔コミュニケーションで,共通の言語(英語)を用いる通常の場合と機械翻訳を用いる場合の比較実験を行った.この実験は,3者にそれぞれにランダムに配列された8枚の抽象図形を与え,チャットを通じて同じ図形を同定していくものである.この実験から得られた対話ログを,参照語に着目して分析したところ,以下のことが明らかになった.(1)実験を繰り返すと,通常は,同定の遅かった照合者に合わせた参照表現を選ぶようになるのだが,機械翻訳を用いた場合にはそうはならなかった.(2)実験を繰り返すと,通常は,前回用いられた参照語を使う傾向があるが,機械翻訳を用いるとそうなるとは限らない.(3)実験を繰り返しても,参照語を用いて最短のプロセスで図形を同定できる割合が,共通言語を用いる場合ほど増加しない.これらの現象から,機械翻訳を用いた場合には,自分と他者,あるいは他者と他者のコミュニケーションを正しく理解できないため,共通基盤の成立が困難となっていることが明らかとなった.