網膜双極細胞のイオン電流モデル

石原 彰人  神山 斉己  臼井 支朗  

誌名
電子情報通信学会論文誌 D   Vol.J80-D2   No.12   pp.3181-3190
発行日: 1997/12/25
Online ISSN: 
DOI: 
Print ISSN: 0915-1923
論文種別: 論文
専門分野: バイオサイバネティックス,ニューロコンピューティング
キーワード: 
網膜双極細胞,  イオン電流モデル,  シミュレーション解析,  

本文: PDF(636.5KB)>>
論文を購入




あらまし: 
視細胞,水平細胞および双極細胞からなる網膜外網状層は,外界像のエッジ,コントラスト情報の抽出,反対色応答の生成など,視覚情報の基本的処理を行う神経回路網と考えられている.網膜双極細胞は,外網状層で処理された情報を統合し出力する役割を担う重要な細胞であり,生理学的研究によって双極細胞の情報処理機構の基本であるイオン機構が明らかにされつつある.本論文では,これまでの生理実験結果に基づき双極細胞のイオン電流モデルを構築した.膜電位に依存する各イオン電流は,Hodgkin-Huxley型の微分方程式により記述した.また細胞内カルシウム機構をモデル化することにより,細胞内カルシウム濃度変化に依存したイオン電流の特性を表現した.次に,膜電位固定応答および膜電流固定応答実験から,本モデルが双極細胞の電気生理学的特性を,十分再現することを確認した.また膜電流固定シミュレーションにおける各イオン電流の時間特性を分離し,電位応答形成に対する各イオン電流の役割を明確に示した.更に本モデルを用いて,杆体双極細胞およびすい体双極細胞における膜電位固定実験時の膜電流応答を解析した.これより,形態で識別したすい体型,杆体型の双極細胞での,短い時間スケールにおける膜電位固定応答電流波形の違いは,双方の細胞体に存在する一過性外向きカリウム電流の有無により表現できることが示された.本論文で提案した双極細胞モデルは,今後,網膜外網状層の処理機能の解明など網膜機能研究に対して大きく寄与するものと考えられる.