システム開発ビジネスの採算性に関する考察―プロスペクト理論と自己組織化臨界現象モデルに基づいたコスト見積―

池田 明  

誌名
電子情報通信学会論文誌 A   Vol.J101-A   No.8   pp.196-209
発行日: 2018/08/01
Online ISSN: 1881-0195
DOI: 
論文種別: 論文
専門分野: 非線形問題
キーワード: 
システム開発コスト,  リスク,  不確実性,  プロスペクト理論,  自己組織化臨界現象モデル,  

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あらまし: 
日本経済は長期間停滞している.対策の一つとして,政府は従来の高機能・単品売り産業からシステム課題解決・高付加価値型(システム開発)産業へ構造転換を提言した.産業構造転換によるビジネスモデルを明らかにするため,システム開発に伴うリスク・不確実性と開発コストとの関係を調べ,開発収支構造と契約制度について考察する.本論文では,システム開発を契約コストの決定,システム設計及び設計製造の3段階の工学活動として捉える.契約コストは標準正規分布と仮定し,システム設計活動はリスク下における設計チームの意思決定問題としてプロスペクト理論を,設計製造活動はWBS(Work Breakdown Structure)の分解・連結を繰返す自己組織化臨界現象を適用した開発コストモデルを提案する.このモデルから開発コストの確率分布を理論解析し,米国会計検査院が公表する報告書から大型システム開発実績データを抽出して統計処理した結果と比較してよく一致することを確かめた.更に,実績コストの平均値が約0.4σ(σはコスト超過率の標準偏差)契約コスト超過になることを導出した.この結果,開発コストモデルの有効性と併せてリスク及び不確実性がコスト超過に至るメカニズムを解明した.システム開発がビジネスとして成立するためには,日本の契約制度にリスク・不確実性補償等のしくみを導入する必要性を示唆した.